湯山温泉の麓にある「パラミタミュージアム」は2003年に開館した2階建ての私立美術館ですが、18年も経っているとは思えないほど、ユニバーサルデザイン的によく配慮されたシンプルで美しい建物でした。
入口に近い車いす駐車場と深い軒のある自動ドアにより、穏やかな日はエントランスまでに全くストレスがありません。そして風除室には、入館者が自由に利用できる車いすが2台とベビーカーが1台置かれていました。受付カウンターには、筆談をしますという耳マークが置かれていました。

(エントランス部分)
後期高齢者を含むUDほっとねっとのメンバー5名が伺ったこの日は、2月にしては珍しく温かったので、まずは奥のパラミタガーデンの散策路に向かいました。元々の自然を生かしたこのガーデンは、途中からは砂利道になっているものの道は平たんで、彫刻などのアートと山野草の心落ち着く庭を歩くと心が洗われる様でした。

(パラミタガーデンと取材メンバー、そして2階へのスロープ 撮影者:国保 暁)
2階へは、エレベーター、階段、スロープのどの手段でも行く事ができます。
パラミタガーデンに面した緩やかなスロープからは、大きなガラス越しに美しい景色を楽しむ事ができます。ただこのスロープはとても長いので、自走の車いすの方には、エレベーターで昇ってからスロープで降りることをお勧めします。(企画展示は、スロープで登りきった側から始まっているのでご注意ください)

(1階2階の多機能トイレと一般トイレ)
1階と2階の多機能トイレでは、手すりの位置が左右反転しているので、利き手に合わせて選ぶことが出来ます。(オストメイトはありません)
特筆すべきは、多機能トイレだけでなく、一般トイレの各ブースごとに緊急通報装置が付いていたことです。心臓などに不安がある方には、嬉しい設備ですね。なお通報は、事務所と廊下に繋がっているとのことでした。
館内にある自動販売機のあるサロンで、学芸部長の湯浅氏を囲んでお話を伺いました。

(湯浅学芸部長)
Q 御社の取り組みの中で、高齢者に優しい一押しの取り組みはなんですか?
ANSWER
「眺めの良い緩やかなスロープですね。車いすの方だけでなく、足腰の弱い方にも庭園の景色を楽しみながら、利用して頂けるようになっています。」
Q 地域への貢献活動があれば教えてください。
ANSWER
「現在105歳になる創設者の小嶋千鶴子氏は、有名ではなくても素晴らしい芸術家がたくさんいるので、それらの作家を多くの人に紹介すること、そして若い人たちに芸術に触れてもらうことが大切であると考えています。
その為、中学生以下の入場料を無料にし、写生大会を開催したり、美術館を中学生の職業体験の場として提供しています。
Q お客様に向けたサービスの中で、今後一番力を入れていきたいことは何ですか?
ANSWER
少しでもたくさんの方に楽しんでいただけるような企画展示です。
湯浅様、貴重なお話をお聞かせ頂きありがとうございました。
私たちの近くにこんな素敵な美術館があることを誇りに思います。
忙しい毎日ですが、芸術に出会いに行く心の余裕をもちたいものです。
【取材の感想】
<藤本 春生>重要文化財の観音像などすべてが素晴らしい。ただ、ビデオに字幕があると更に嬉しいです。
<西村 昌子>高齢者仲間と、この庭へ来て一日を過ごせる幸せを共有したいなと思いました。
<金澤 暁美>広い庭が歩きやすく、楽しむことができました。
<国保 暁>設計者として、バックヤードの重要性や温湿度などの収蔵品の管理の大変さについて 興味深くお聞きしました。設計の初めの段階から学芸員が参加すべきという貴重なご意見に感じ入りました。
<伊藤 順子>一見穏やかな美術館の裏では、企画の努力や収蔵品の管理など、表には出ないご苦労がある事を知りました。また創設者の思いをお聞きすることが出来て光栄でした。
【常設展示】
●池田満寿夫の陶彫「般若心経シリーズ」
●洋画家・小嶋三郎一(こじまさぶろういち 創設者小嶋千鶴子氏の夫)の絵画
●萬古の名陶(江戸時代中期の古萬古から四日市萬古ほか周辺までのコレクション)
【入館料】
●一般1,000円(4枚セット3,000円)
●大学生800円・高校生500円・中学生以下無料
●障害者手帳をお持ちの方は無料
●小ギャラリーは無料